emica

投稿: 2006年10月6日

3週間ほど前、いつものように RSSリーダーで、ニュースの見出しをチェックしていると、日刊スポーツに「emicaがソロ歌手として再デビュー」という記事を見つけた。「emicaって誰?」と思いつつ、「再デビュー」とあるからには元々歌手だった人だろう、などと思って、好奇心から記事本文を読んでみた。すると、「 3人組ハーモニーユニット、Angelique(アンジェリーク)で活躍したemica(22)が、6日にソロ歌手として再デビューする。」と書かれていて、驚くと同時に嬉しい気持ちになった。

2000年の秋頃、ラジオをつけて適当にダイアルを回していた時 (実際には回るダイアルなんかついてないラジオだったけど) 、 FM世田谷という聴取エリアが狭い FM局から、きれいな女性ボーカルのハーモニーが聞こえてきた。思わず手を止めて、その曲が終わるまで聞き入ってしまうほどだった。その曲が何だったかはよく覚えていないのだが、洋楽の比較的有名な曲をアレンジして、アカペラで歌っていた。これが僕が Angeliqueを知ったきっかけだ。

Angeliqueは、2000年から 2001年にかけて活動していた、当時高校 1年生くらいだった女の子 3人のボーカル・グループである。彼女たちの音楽は、一言で言ってしまえば girl's popなのだが、そんな風な簡単な表現が失礼だと感じるほど、きれいなハーモニーを持っていた。前述のラジオでのアカペラを聴いていらい、僕は彼女たちの歌声に惹かれ、我が家では受信しづらかった FM世田谷のその番組を、毎週聞くようになった。番組の中で紹介された Angeliqueの歌を聴いてみると、テレビの CMなどで聞き覚えがあるものだった。きれいなハーモニーを生かした曲だとは思ったが、正直に言えば初めて聞いたアカペラほどの強烈な印象を与えてくれるような歌ではなかった。番組の中では、彼女たちがそれぞれ好きな曲を紹介するコーナーがあった。これがなかなかセンスのいい選曲だと感じさせられたのをよく覚えている。どんな曲を紹介していたかはよく覚えていないのだが、僕も比較的好きな曲が何曲も出てきた。そして、そういう曲のほとんどを、高校生だった頃の僕は知らなかったと思うのだ。もちろん、中には僕が高校生だった頃よりも後の時代の曲もあったのだが、それより古い曲もかなりあったと思う。

Angeliqueを知って数ヶ月後、彼女たちが 4枚目の CDを出した頃、僕はアメリカに行ってしまい、そのラジオ番組を聞くことができなくなってしまった。その気になれば、インターネットで彼女たちの活動状況などを知ることもできたのだが、結局アメリカにいた 1年間は、 Angeliqueの動静を知ることはなかった。アメリカから帰ってきてから、久々に彼女たちの声を聞けるのを楽しみにラジオをつけてみたのだが、もうその番組はなくなってしまっていた。 Webでいろいろと検索してみた結果、活動休止 (事実上解散) してしまったという、なんとも残念なことが分かった。それで、廃盤になってしまう前に手に入れようと、 Angleiqueが出した 5枚の CDをまとめ買いした。

そんなわけで、前述の日刊スポーツの記事には驚いたと同時に、嬉しいような懐かしいようなそんな気持ちになった。そして、何も考えずに CDを注文していた。注文してから、 Angeliqueの頃はハーモニーが売りだったわけだから、ソロになるとなかなか大変ではなかろうか、などと考えた。果たしてどんな感じになっているのか、大変楽しみになった。

先日 CDが届いたので早速聞いてみた。相変わらず歌は上手だと思った。そして、「あれ? こんなに張りのある声だったっけ?」というのが第一印象だった。さらに聞いていると、甘いような切ないようななんとも言えない声になる部分もあって、 Angeliqueの頃とはだいぶ印象が違っていた。それで、改めて Angeliqueの 5枚の CDを聞いてみたのだが、 3人の時は、お互いがお互いの声を引き立てようとでもするかのように柔らかく歌っていることが多かったのかなと感じさせられた。最後に出した曲では、それぞれの声の特徴が分かるようなアレンジになっていたのだが、それにしても、あれから 5年もたっているわけで、声の印象も変わるというものだろう。いずれにしても、 5年前とは印象が違うものの、なかなか良いな、というのが正直な感想だった。 Angeliqueの美しいハーモニーはないけど、彼女の声の特徴がしっかりと出ているこの曲の方が、僕には好みのアレンジだと思った。また、 Angeliqueの時は (おそらく意識的に) 詩の内容が妙に女の子っぽさを協調するようになっているものが多かったのに対して、 emicaの曲の詩はそれに比べるとかなり大人の詩になっていたのも好感を持つことができた。

歌唱力は平均以上だけど、「emicaじゃなければ」という部分がまだ見えない、という感想をどこかのブログで読んだ。これはそうかもしれない。僕が聞いた感じでは、彼女の声はソール系の歌に合うのではないだろうかという気がした。聞くところによると彼女は作曲も勉強しているということなので、彼女自身の歌声や歌い方が生きるようなスタイルを作り出して行って欲しいと感じた。いずれにしても、今後に注目したい。でも、あのきれいなハーモニーをまたいつか聞きたいな、とも思ったりして。

余談その1: emicaのオフィシャルサイトというのに行くと、プロモーション・ビデオを一部見ることができたり、彼女のブログへのリンクがあったりする。こうしてみると、昔はレコード会社とか所属事務所ががんばってテレビやラジオの出演枠を確保したり、いろいろなメディアの取材を獲得したりしなければまず僕たちの所に伝わってこなかった情報が、今は情報を得たい人にはちゃんと伝えられるようになったのだなと感じる。僕が emicaのことを知ったのは日刊スポーツの記事 (のインターネット版) だし、 ANgeliqueを知ったのもラジオだったわけだから、知らない人に伝える手段としてのインターネット以前のメディアの役割もそれなりに大きいのだとは思うが、やはり以前ほどではないだろう。情報を発信する側も受け取る側も、そしてメディアを作る人たちも、このあたりのメディア毎の特性をしっかり考えないといけないのだろうなと感じた。

余談その2: Angeliqueという美少女系ゲームがあって、そっちの方が有名らしいのだが、僕は知らなかったし、こっちの Angeliqueとは関係ないらしい。もっとも、こっちの Angeliqueの 3人も美少女らしいですが。

余談その3: 最近、初めて聞いた歌のメロディーがすんなり覚えられないことが増えた気がする。これはメロディーが複雑になっているのか、僕の脳みそが老化しているのか……。

君と僕の想い