夏時間と標準時間

投稿: 2007年3月14日

例年、アメリカでは時計を 1時間進める、いわゆる夏時間は 4月の第一日曜日に始まり、 10月の第四日曜日に終わる。しかし、今年からは 3月の第二日曜日から 11月の第一日曜日までになったのだそうだ。つまり、アメリカでは、今年は 3月 12日からすでに夏時間に変わっているということだ。

ところで、この夏時間というやつ、どうも僕は納得できないものを感じている。そもそもまだ夏でもないのに夏時間というのが解せない。と、そんなことを言うと、おそらくアメリカ人には「だから我々はより正しく daylight saving timeという名前を使っているんだよ」と言われてしまいそうだ。しかしヨーロッパでは summer time とかそれに対応する現地語が使われているという話も聞いたことがある。

そんなことよりもっと気になるのは、時計を 1時間進める前の時間のことを「標準時間 (standard time)」と呼んでいることだ。去年までのアメリカでは、夏時間の期間は30週間だったわけだが、 30週間というのは、 52週ある 1年の 2分の1以上である。そして、今年にいたっては夏時間の期間が 34週間もあって、これはほぼ 1年の 3分の2に当たる。夏時間の方が標準時間よりも 16週も長いわけだから、こうなってしまうと、もはや夏時間の方を標準時間と呼んだ方が分かりやすいのではないかとすら感じてしまう。もちろん、この標準時間という言葉は、世界標準時に基づいた時間、という意味合いが強い言葉なのではないかという気がするから、これはこれで良いのだろうが、やはり何とも解せない物を感じてしまう。と書いてから、「考えてもみれば世界標準時は Coordinated Universal Timeで、どこにも standardなんて入ってないな」と思って、ちょっと Wikipediaで調べてみた。すると、世界標準時というのはどうやら俗称であって、正しい日本語は協定世界時、というらしい。そして、この協定世界時 (UTC) に基づいて決められた世界各地域の時間を、地方標準時というのだそうで、どうやら「標準時間」というのはここから来ているらしいことが分かった。

ところで、同じような話で未だに解せない話がもう一つある。数年前、日本でデフレが進んで「価格破壊」なんて言葉をよく耳にした頃、その象徴のような取り上げられ方をしていたのが、マクドナルドのハンバーガーの値段だった。この時、マクドナルドではハンバーガーの「平日半額キャンペーン」というのをやっていて、いくらだったかは忘れたが、びっくりするような安い値段でハンバーガーを販売していた。しかし、僕はこの「平日半額キャンペーン」というのにどうも納得がいかなかったのだ。考えなくても分かることだが、一般的な週の中で平日は 5日、そうでない日 (週末) は 2日だ。マックのハンバーガーは、標準価格で販売されていたのは週にたったの 2日で、残りの 5日は半額で販売されていたということだが、だとすると、半額で売っていた期間の方が圧倒的に長かったことになる。それならば、その長い方の期間の価格を標準価格とする方が適切なのではないだろうか。つまり、あれは本当は「週末倍額キャンペーン」だったのに、消費者に悪い印象を与えないように、どちらかと言うと不適切な「平日半額」という表現を使っていたのではないか、などと思うのだ。あれ以来、僕はマクドナルドに対する印象が、それまで以上に悪くなった。

夏時間に話を戻そう。北半球の国々が夏時間に入る頃に前後して、南半球の国々では夏時間から標準時間に戻る。しかし、これを「冬時間に入る」と表現しているのを何度か眼にしたことがあるのだが、僕にはどうもこの表現の方が適切であるように思える。「夏時間」に対する言葉として、「標準時間」よりは「冬時間」の方が明らかに正しいような気がする。そうすれば、非標準よりもマイナーな物を「標準」などと呼ばなくてすむのでなお良いのではないだろうか。