これも反撃の一環か?

投稿: 2008年3月22日

少し前のニュースだが、 3月17日に富士通とNTTドコモが、東芝製ソフトバンクモバイル端末が富士通製ドコモ端末に告示しているとして、ソフトバンクモバイル端末の製造・販売等の差し止めの仮処分命令を求める申し立てをしたというニュースがあった。これは、ドコモのらくらくホンIIIとソフトバンクモバイルの 821Tが告示しているとドコモ、富士通が考えていることに端を発しているもので、実際デザインなどは似通った部分も少なくないようだ。しかし、ネット上のいくつかの記事を読むと、どうもこのドコモ、富士通の主張がおかしなものに感じられてくる。

まず目についたのがBusiness Media 誠の「神尾寿の時事日想: 単なるパクリなのか? ドコモの「仮処分申請」」という記事だ。この記事では、ドコモ側の主張を支える論拠の弱さを指摘している。また、ドコモ側の姿勢について、以下のように問題視している。

Business Media 誠 - 神尾寿の時事日想: 単なるパクリなのか? ドコモの「仮処分申請」

 特に問題なのは、ドコモ・富士通側が不正競争にあたるとする“ファウルライン”を明示せず、特許権や意匠権といった明確な権利にも基づいていないことだ。「全体の印象が酷似している」「消費者が混同して選ぶかもしれない」という曖昧な主張が通れば、ほかのキャリアやメーカーの製品を分析し、その上に独自改良を積み上げるということができなくなる。 (中略)

 また、ドコモと富士通が主張する「外観上の酷似」がダメとなれば、今後のUI改良において余計な要素を絞り込む“マイナスのデザイン”が取りにくくなる。いみじくも今回の一件で分かったとおり、シンプルで使いやすいUIは、その理想型に近づけるほど外観上の特徴が似てしまうのだ。今回のドコモ・富士通の主張が認められるのならば、今後のUI開発において他社との外観上の酷似を避けるためだけに、余計な要素の追加や操作体系の変更をしなければならなくなる。係争を避けるために、本来の使いやすさとは外れる形にUIをデザインしなければならなくなるとすれば、それはユーザーの不利益になる。

記事中でも触れられているが、 UIというのは多くの人が使いやすいと感じるものが生き残り、そうでないものは消え去っていくものである。ユーザからのフィードバックの積み重ねによってより良いものができていくものだ。「より良い UIを実現するためなら他社のアイディアを盗んでもよい」などという乱暴なことを言う気など全くないのだが、多くの人に受け入れられる UIというのは1社、1キャリアが独占するようなものではなく、業界全体の財産として育てていくべきものなのではないかと思うのだ。上の記事によれば、 821Tはらくらくホンに似ているもののらくらくホンにはない使いやすさのための工夫も見られるという。そうであるなら、その改良点を参考にドコモ、富士通もさらに良いもの、使いやすいものを作って「業界の財産」を育てればよいのではないか。それがユーザのためにもなるのである。それともドコモ、富士通は自分たちの製品が売れればそれで良いのだろうか。そんな意識なのだとすれば、もうらくらくホンに大きな進歩を期待することはできないのではないかと、1ユーザとしては大いに不安にもなる。

実は、この申し立てに関する発表が行われた日に発表された次期らくらくホンについてはそれなりに興味深いとは感じているのだが、ドコモや富士通がこんな姿勢なのだとしたら、このシリーズに自分の金を出すことはもうないだろうという気がする。 (1円とかなら間違って払ってしまうかもしれないが…。) 本当にユーザのことを考えている企業、自分たちのためではなくユーザのために物作りをする企業の製品を使いたい、僕は強くそう思うのだ。

ちなにケータイ Watchの「法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」 NTTドコモと富士通による「かんたん携帯」販売差し止めの狙いとは?」という記事でも、今回の件について書かれている。こちらもドコモ、富士通側の姿勢に疑問を投げかけている内容だが、ぜひ読んでみていただきたい。

ところで、この件に関する記事を読みながらふと思い出したことがある。そう、およそ1年くらい前にドコモが唐突に「さて、そろそろ反撃してもいいですか?」と言い出したことだ。 (マイコミジャーナルの記事によると、どうやら2007年の5月10日のことだったらしい) 僕はその後ドコモの反撃らしきものを一切観た記憶がなかったのだが、今回の一見に関する記事を見ながら「ああ、これが反撃なのかな?」などと思ってしまった。他にどんな反撃があったのか知らないが、「さて、そろそろ反撃止め他方がいいんじゃないですか?」 (効果ないみたいだし。)

さらにどうでもいい話だが、このドコモの反撃の CMを見る度に、僕の頭の中には
「反撃、反撃、無理だドコモの反撃、
反撃、反撃、無理だドコモの反撃、
できるもんならやってみな」
という言葉が、懐かしいメロディーに乗ってぐるぐる回っていたものだ。いやぁ、歳がばれますな。 (笑)