Thunderbirdでメールアドレスの使い分け

投稿: 2010年4月22日

メールアドレスを一つしか持っていないという人が今やどれくらいいるのかよく分からないけど、複数のアドレスを使い分けるのって結構手間じゃないですか?最近、そんな「面倒」やそれからくる失敗を防いでくれそうなThunderbird用のアドオンを見つけたので紹介してみることにした。

僕がインターネットの世界に足を踏み入れた頃は、二つ以上のメールアドレスを持っている人というのはそれほど多くなかった。ところが、最近ではフリーメールのサービスもいろいろとあるし、さらにはアドレス拡張を利用できるようになっていて一つのサービスの中で複数のアドレスを使えるようなことも増えてきた。多くの人は仕事関係のメールとそうでないメールで職場アドレスとISPやフリーメールのアドレスを使い分けているだろうし、オンラインのいろいろなサービスを利用する際に、サービスごとに微妙に違うアドレスを使うような場合も少なくないだろう。僕もいろいろな立場で取得したいろいろなメールアドレスがある上に、オンラインでのショッピングやその他のサービス利用ではいちいち違うアドレスを使っているので、もはや自分がいくつのアドレスを使い分けているのか全然分からないような状態になっている。普段使うアドレスはせいぜい四つくらいなのでそれほど困らないが、それでも仕事関係のメールにうっかり個人アドレスから返信してしまうようなことは時々あるし、普段使わないようなアドレスからメールを出さないといけない時なんかはかなり面倒なものだ。

よくある失敗としては、上述の「仕事のメールに個人アドレスから返信」以外にも、オンライン・ショッピングに関する問い合わせをするのに、そのショップに登録してあるアドレスからではなく、個人アドレスから送信してしまって以後個人アドレスに宣伝が送られてくるようになった、とか、メーリングリストに登録してあるのと違うアドレスから送信して投稿がはねられた、などといった例を挙げることができる。

僕がUnix上で使っているWanderlustというメールソフトの場合、ちゃんと設定してやれば、返信しようとしているメールのToやCcのアドレスを見て適切なアドレスを差出人のアドレスに変更してくれる機能がある。また、新規にメールを送信する場合でも、そのメールのToやCcを見て適切なアドレスをFromに設定させるようにもできる。さらに、必要があればFromを任意のアドレスに書き替えることもできる。そんなわけで、Wanderlustを使っている時はほとんど差し出しアドレスは気にしなくていいし、たまに普段使わないようなアドレスからメールを送信しないといけないような場合でも問題なく対応できる。ところが、Thunderbirdの場合、標準状態ではこういった処理をするのが、現実的には不可能なので、Unix環境にアクセスできないと処理できないメールというのもこれまでは少なからず存在した。

標準状態のThunderbirdでも、差出人のアドレスとして使うアドレスを複数登録しておいて、メール作成の画面で差出人を選ぶことはできる。ただ、適切なアドレスを選ぶのを忘れてしまって、意図しないアドレスから送信してしまうことはしばしばある。また、僕のように無限と言ってもいい数のアドレスがある場合、その全てをThunderbirdに登録するのは非現実的だから、上に挙げたような問題を解決することはできない。ところが、最近たまたま見つけたVirtual Identityというアドオンを入れると、こういった問題をほぼ解決できそうなのだ。

このアドオンをインストールすると、メールの返信をしようとした時に、返信対象のヘッダを解析して、ToやCcにあるアドレスを抽出して、今送信しようとしているメールの差し出しアドレスになり得るアドレスのリストが作成される。 (どのヘッダ・フィールドを解析するかは設定によって変更することができる。) そして、このリストの中から適切なアドレスを選ぶこともできるし、差出人の欄を編集して任意のアドレスを挿入することもできる。ここで使用するアドレスは、Thunderbirdに差出人として登録されている必要はなく、一時的に差出人として利用できるようになるようだ。

新規にメールを作成する場合は、解析できるヘッダがないのでどうやらこの機能は使えないらしい。本当はToやCcに入力したアドレスから推測して欲しいのだが、どうもそうはならないらしい。 (もしかするとこれは設定の問題なのかもしれない。) しかし、過去にメールを送信したことがある相手ならば、その時に使った差し出しアドレスの記録に基づいて、差し出しアドレスを設定してくれるらしい。したがって、少なくともこのアドオンを使い始めてしばらくの間は、新規メール作成時には注意が必要だろう。

でも、その注意を忘れるからいろいろな事故が起きるのだ。ということで、苦肉の策といった感じではあるけれど、このうっかりを防止する方法として、僕はこういう手を使っている。まず、アカウントの設定の画面を開き、送信メールサーバの一覧を表示する。ここに、新しくメールサーバを追加するのだが、ここでのポイントは実際には使えないホストとポートを指定することだ。 (僕の場合はlocalhostの9999番ポートを指定している。)

次に、普段使うメールアカウントの設定 (名前なんかを変更できる所) を表示する。その画面で、差出人欄に表示される自分の名前とアドレスを適当に変更する。 (「差出人未選択」、「unselected@example.com」などとすれば分かりやすいかもしれない。) そして、送信メールサーバの設定を、先ほど追加した使えないサーバに変更する。その後、送信者の管理の画面を出すボタンを押す。 (英語UIでは Manage Identitiesとなっているが、日本語UIではどうなっているか分からない。) この画面で、新しい送信者 (identity) として、正しい名前とメールアドレスを指定したものを追加する。この時、送信メールサーバももちろんちゃんと使える方のサーバを指定する。

このようにすることで、ついうっかり差出人の設定を忘れてメールを送信しようとした場合は、使えない送信メールサーバにアクセスしようとしてエラーが発生するようになる。つまり、適切な差出人を設定しない限り、正しくメールを送信できなくなるわけだ。

他にも似たような機能を持つアドオンをいくつか試してみたことがあるが、このVirtual Identityが一番ニーズを満たしてくれるという印象だ。できることなら、「苦肉の策」の必要がないようになると良いのだけれど、とりあえずはこれで困ることはなさそうだ。