音のAR

投稿: 2012年4月12日

AR (Augmented Reality、拡張現実) というと、Sekai Cameraに代表されるような、映像を使ったものがよく知られているのではないかと思う。でも僕にとっては映像は現実の一部ではなくて、音声情報がないARは現実でもなければ拡張もされていない、とかねてから思ってきた。そんなわけで、折に触れて「音のAR」ということについて考えている。

なぜこんなことを急に書こうと思ったかというと、昨日聴いたこのポッドキャストの最初の方で、なかなか面白い発言があったからだ。これは骨伝導ヘッドフォンのレビューで、実際に使った感想などが語られている。骨伝導でスマートフォンなりオーディオプレイヤーなりからの音を聴きつつ、耳からは自分の周囲の音を聴くことができる、というのはまあ当然なんだけど、これをうまく使えば「音のAR」ができるのではないかという話。これには思わず膝を打った。

前述の通り、音のAR、とりあえずはSekai CameraならぬSekai Microphoneでもできないものかと思うようになって久しいのだけど、普通のヘッドフォンを使うと周囲の環境音は聞こえないわけで、現実の音の上に新たな音のレイヤーを重ねる、ということはできない。

ではスピーカーならどうかということになるけど、それだと音質面でも期待できないし、1箇所からしか音が聞こえてこないということになって、やはり全然ARっぽくないと思う。もちろんちゃんとしたオーディオ・システムがあるような部屋ならそれっぽい音を出すことは可能だろうけど、それを環境音をかき消さずにやるのは結構大変なのではないかと思うし、そんな大がかりな音響機材が必要になってしまったら、やはり本末転倒といった感じだ。

でも骨伝導ヘッドフォンならば、環境音も聴きつつ、 (音量の調整は必要だろうけど) 丁度いいバランスで別の音を重ねられるのではないだろうか。それもステレオで。

そうすると、例えば丁度24時間前にこのバーのこの席に座っていた人が聴いていたのと同じ音を (ステレオで) 聴きつつ、今の周囲の音も聞こえる、なんてことが実現できそうな気がする。24時間前も今も音楽がそれなりの音でかかっていたりすると話がややこしそうだけど、人の声とかグラスの当たる音とかシェーカーを振る音とかだけが静かな空間に流れている、というような感じだと充分に面白いことになるのではないだろうか。

前述のポッドキャストでレビューしていた製品は、普通にヘッドフォン端子にケーブルを接続する形の製品だけど、もしこれがBluetooth接続できるものだと、スマートフォンの適当なアプリケーションを作る必要はあるにしても、本当に面白いことができそうだと思う。ということで早速Bluetooth接続ができる骨伝導のステレオのヘッドフォンというのを探してみたけど、どうやらそういうものはないらしい。もしそういった製品に関する情報をご存じの方はぜひ教えていただきたい。